S2AR を使うためには

S2AR を使うためには

S2AR を使うためには、事前の準備が必要です。すばらしい拡張現実の世界が、あなたを待っています。一つずつ慎重に作業を進めてください。

必要なもの

①iPhone、iPad(iOS 11 以上)
機種としては、A9プロセッサー内臓の iPhone 6S 以降、iPhone SE、iPad(第5世代)以降が必要です。本書は、iPhone SE を使って作業を進めていきます。

②パソコン(Windows、Mac)
ご家庭の Wi-Fi につなぐ場合は、無線LAN内臓パソコンが必要です。USB接続の無線LAN子機で Wi-Fi につなぐこともできます。
iPhone のUSBテザリングを利用する場合は、iTunes アプリをインストールしておく必要があります。Mac はあらかじめインストールされていますが、Windows ではネットに接続して、ダウンロード後、インストールしてください。

iTunes アプリ(Windows)へのリンク

作業手順

手順をまとめると以下のようになります。

①iPhone に S2AR アプリをインストールする

②パソコンで、ScratchX サイトを開く

③iPhone とパソコンを接続する

④原点(Origin)を置く

⑤仮想オブジェクトを設置する

以下の節で、一つずつ作業を進めていきます。

S2AR とは

S2AR とは

S2AR アプリへのリンク

Scartch と拡張現実をコネクトする

S2AR(Scratch2ARkit)は、その名前の通り、Scratch というプログラミング言語と ARKit(拡張現実アプリ開発フレームワーク)を接続します。そうすることで、Scratch プログラミングで拡張現実の中に立方体(ブロック)を設置することができるようになります。
「ブロックを積み重ねてクラフトする」という意味で「マインクラフト」ライクのようなアプリケーションといえるでしょう。マインクラフトがこの現実世界に飛び出してきたイメージです。

S2AR は Junya Ishihara 氏によって開発された iPhone/iPad 専用のアプリです。Junya Ishihara 氏は S2AR の他にも、Scratch とマインクラフトを接続する「Scratch2MCPI 」などの「Scratch2 -」シリーズのプログラムを公開されています。興味のある方は GitHub という、ソフトウェア開発の共有サービスを覗いてみましょう。

GitHub – Junya Ishihara へのリンク

誰でも気軽に拡張現実を楽しむために

拡張現実(AR = Augmented Reality)は、SF漫画やアニメの世界ではおなじみの近未来技術です。拡張現実では、現実世界に重ねて、必要な情報やオブジェクト(物体)が現れては消えていきます。スタイリッシュな便利さから、拡張現実に興味を持っている人はたくさんいると思います。

拡張現実をプログラミングする上で、第一のハードルは必要機材が高価なことです。例えば、VR(仮想現実)対応をうたう「ゲーミングパソコン」は20万円程度で販売されています。一番人気のある VR ゴーグルである「HTC Vive」は約10万円で、合計30万円の出費が必要です。
S2AR は無料の iPhone/iPad アプリです。iPhone ユーザーでパソコンをお持ちの方は無料で拡張現実をプログラミングすることができるようになります。
高価な機材を買うことができず、拡張現実に触れることができなかった人たちに対して、S2AR で拡張現実をプログラミングしてみることをお勧めします。

第二のハードルは、プログラミング言語の難しさです。例えば、Unity というゲーム開発環境でプログラミングするためには、「Javascript」「C#」「Boo(Python)」といった言語を学ばなければなりません。元来、3Dゲームを開発するのに必要だった「C/C++言語」より習得が容易だと言えますが、自分が思い通りのものを作り上げるためには、通常、数十時間〜数百時間の学習が必要です。
S2AR の開発言語は「Scratch」です。Scratch は子どもを含めた初心者向けのプログラミング言語として最も有名なものの一つです。本屋に行けば関連の書籍がたくさん出版されており、日本でも人気があります。
Scratch ならプログラミング習得にかかる時間を少なくすることができます。直感的に「Scratch ブロック」を積み重ねることで、すぐに拡張現実プログラミングをスタートできるのです。

図0-3-1

図0-3-1は S2AR を使って、拡張現実に円錐(コーン)を設置した画像です。パソコンの画面に見えている簡単なプログラムで、こういった複雑な形状も自由にクラフトできるのです。この円錐は第2部1章「円錐(コーン)を作る」で詳しく説明します。

以上述べてきたように、「S2AR は誰でも気軽に拡張現実を楽しむために開発された画期的なアプリケーション」なのです。さあ、この機会に拡張現実プログラミングを始めましょう!

ARKit とは

ARKit とは

ARKit は、iPhone や iPad ですばらしい拡張現実アプリケーションを作成することができる、iOS 11 で導入された新しいフレームワークです。デジタルオブジェクトや情報をユーザーの周りの環境に融合させることで、画面の枠を超え、アプリケーションを通じてまったく新しい方法で現実世界と関わることができるようになります。

Apple Developer サイトより

ARKit の特徴

About Augmented Reality and ARKit より

①AR(Augmented Reality = 拡張現実)アプリの開発者向けのフレームワークです。iOS 11 以降で標準機能として組み込まれました。数億台の iPhone、iPad で動作します。iPhone、iPad さえあれば拡張現実を楽しめるのが最大の特徴です。

②VR(Virtual Reality = 仮想現実)のように非現実を表示するのではなく、ARは現実世界に情報を付加する形で、バーチャルコンテンツを浮かび上がらせることができます。例えば、自分の部屋を iPhone で撮影することで、家具を浮かび上がらせてサイズやカラーをコーディネートできるなど、無限の応用が考えられます。

③Unity や Unreal Engine のような他社製ツールでも活用できます。Apple が ARKit の技術を抱え込まず、他社製のツールで利用可能にしたことで、仮想現実技術のスタンダード(標準)になっていくことが予想されます。(S2AR のバージョン1は Unity を使って開発されました。主にパフォーマンスの問題で、バージョン2以降は Xcode + Swift で全面的に書き換えられています。)

VR / AR 社会を生き残るために

ポケモンGO公式サイト より

あなたは「ポケモンGO」をやったことがありますか? このゲームは最も有名な拡張現実アプリの1つです。まるで、その場所にモンスターが本当にいるかのように、熱中して遊んでいるファンがたくさんいます。

安価で手軽に使えるVR(仮想現実)/ AR(拡張現実) の技術が開発されれば、この技術は爆発的に普及していくでしょう。SF の世界がまさに今、訪れようとしています。
VR / AR 技術者はこれから大量に必要とされます。いち早く ARKit をマスターして、来るべき VR / AR 社会のプロフェッショナルを目指しましょう。

新章開幕! S2AR編

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はじめに

子供の頃から、私には夢がありました。それは空間に自由に文字を書くことです。
空想の中で、私は【魔法のペン】を持ち、【多くの観客】を前に【ステージ】に立っていました。手を動かすと、カラフルな文字や図形が空間に現れては消えていきます。それを見て、観客は大喜びしています。—こんな未来の自分の姿を想像していたのです。

その夢が今、拡張現実の世界で実現しました。ステージは【iPhone の小さな画面】で、魔法のペンは【Scratch プログラミング】、そして観客は【すべての iPhone ユーザー】です。この夢の技術(ARKit)は、すべての人が自由に使うことができます。これは画期的なことです!

S2AR は、Scratch というプログラミング言語で、「拡張現実(ARKit)」を操る iPhoneアプリです。
通常、拡張現実をプログラミングするには、高価なグラフィックボードを積んだ VR用のパソコンと、VRゴーグルが必要です。数十万円の出費が必要な上に、高度なプログラミングのスキルも求められます。一般の人は興味があっても、簡単には手が出せません。
対して、S2AR は無料です。そして高度なプログラミングスキルは必要ありません。最も簡単なプログラミング言語の一つである Scratch で ARKit を操作できます。iPhone とパソコンさえあれば、誰でも気軽に拡張現実に「仮想オブジェクト」をクラフトして楽しむことができます。

この本は S2AR 初の解説書です。拡張現実をプログラミングする楽しさを感じていただけることを目的としています。
入門編「仮想オブジェクトを設置する」で、S2AR の基本の操作を解説しています。
初級編「円錐(コーン)を作る」「空間に文字を書く」「正多面体」で、Scratch プログラミングを学習します。
中級編「自動車を作る」「ジオラマ作り」で、学んだ知識を使って複雑な形状の「仮想オブジェクト」をクラフトしていきます。
そして応用編は、S2AR と「外部のアプリケーション・サービスとの連携」です。「3Dモデリングとアニメーション」「地図を表示させる」「分子構造模型」を学びます。
本書を最後まで読み通せば、S2AR と Scratch の基礎が身につき、自由に仮想オブジェクトをクラフトできるスタートラインに立つことができます。

App Store に公開する前の段階で、開発者の Junya Ishihara 氏に S2ARのデモを見せてもらったのですが、その時の興奮は忘れられません。その時は、喫茶店のテーブルの上に立方体の小さなブロックが現れただけでしたが、無限の可能性を感じたのです。その興奮を読者の皆様にも感じてもらいたいと思っています。

拡張現実に興味を持つ、すべての読者を対象にしています。プログラミングのスキルは必要ありません。本書に収録された画像の通りに、Scratch ブロックを積み重ねるだけで、現実世界の上に「仮想オブジェクト」を浮かび上がらせることができます。
意欲さえあれば、小学生でも読み進められるように、すべての漢字にふりがなをつけました。本書はプログラミングの入門書としてもお使いいただけます。(英単語がたくさん出てくるなど、小学生だけのご利用には難しい部分もあります。保護者等のサポートをよろしくお願いいたします)

S2AR、ARKit、 Scratch、MagicaVoxel、Kamio Terrain Generator、地理院地図、その他本書で利用させていただいたプログラムのすべての開発者に謝意を表します。
拡張現実を操る未来のアーティストがここから誕生するかもしれない。その後押しができれば、それに勝る喜びはありません。

平成30年9月吉日 クリエイティブまさ

推薦文

S2ARの最初のバージョンは仮想現実の空間にブロックを置くという単純なものでしたが、
本書は、そこから拡がっていく無限の可能性とARの面白さの一端を垣間見せてくれています。

S2AR の開発者 Junya Ishihara